トップメッセージ

木のある暮らしの実現を通して自然と人と社会の好循環をつくる

ウッドワンは、創業以来、木とともに歩んできた木質総合建材メーカーです。山林経営から木材加工までの一貫生産体制により、商品を開発・生産・販売しています。バリューチェーン全体を通して、さまざまな価値を創造し、木のぬくもりのある豊かな暮らしと持続可能な社会の実現に貢献しています。

株式会社ウッドワン 代表取締役社長
中本祐昌

循環型のビジネスモデル

気候変動による影響が顕在化する中で、GHG(温室効果ガス)排出量削減が世界共通の目標になっています。約4億数千年前、光合成の競争のためにリグニンという物質を合成する植物が出現し樹木が誕生しました。リグニンは生分解が難しく、枯れた樹木が地中で分解されずに溜まったものが石炭や石油です。それを露出させて燃やすことでCO2が排出されています。木を育て、そこから木材製品を生産することは、植林で吸収したCO2を炭素として固定する貯蔵庫を生産しているということです。私たちができることは、このようにもう一度CO2を植物に戻して、それを長期的に使うことです。
当社のルーツは林業にあります。1935年に広島県佐伯郡吉和村(現廿日市市吉和)で創業以来、森を育て、木を伐採し、製材からの一貫生産による高品質な商品を販売して得た収益で再造林する循環型の森林経営を行ってきました。それを継続、拡大していくために収益を上げて再投資していくことが私たちの仕事です。

2023年度の振り返り

原料の調達コスト高騰や物流コストの上昇、円安の進行などが続き、2023年度は減収減益となりました。それは、環境に貢献できる量が少なかったということであり、そこが一番の反省点です。
2023年度はニュージーランドの生産拠点を集約し、構造改革を行いました。円安が進むとニュージーランド産の材料や製品が割高になり、日本のマーケットで競争力を失うことになります。競争力回復のためにもさらなるコスト削減を進める必要がありました。
主力市場である国内の住宅着工戸数は前年を下回る水準で推移し、この傾向は今後も続くと予想されます。無垢商品や省施工商品といった付加価値の高い商品を核とした内装建材の拡販に注力するとともに、国内のリフォーム・非住宅市場や海外市場といった新たな市場の開拓を進めなければなりません。売上の維持・拡大とともに利益率の改善にも取り組みます。プラス材料としては政府による木造建築推進や住宅向け省エネキャンペーンがあります。リフォーム市場では、国土交通省など3省連携による補助事業に対応した商品を提案する「住宅省エネ2023キャンペーン」の特設サイトをオープンし、「先進的窓リノベ事業」に対応する無垢の木の内窓「MOKUサッシ」を展開しています。

上質で時代に左右されないデザイン

日本では、住宅に木を使うというと伝統的な和風建築かフィンランドのような北欧スタイルのイメージが強く定着しているため、今のライフスタイルに合った新たな木の良さを活かすデザインを提案したいと考えていました。ご縁があって世界的なプロダクトデザイナーの深澤直人さんのデザインによる「WO Timeless standardcollection」が生まれ、2024年5月に発売となりました。上質で時代に左右されず、暮らすうちに味わい深く変化していく新しいコレクションです。当社のハイエンド商品として、お客様に新たな価値を提供していきます。大手ハウスメーカーからも、ブランドとして扱いたいという引き合いもあります。カタログだけでは魅力を伝えきれないので、ショールームでの展示、関東では戸建てのモデルルームを作りました。今後もお客様に知っていただき、リアルに触れていただくための働きかけをしていきます。
2024年で8回目を迎えた「ウッドワン空間デザインアワード」は、木のぬくもりを活かした空間をテーマに施工例を募集し、優れた空間デザインを表彰するものです。審査委員長の伊東豊雄先生にも「回数を重ねるごとにレベルが上がっている」とお褒めの言葉をいただいています。アワードを通していろいろな気づきがあり、製品開発にも活かすことで、その製品を設計者の皆様に使っていただくという好循環もできてきました。
ショールーム「ウッドワンプラザ」では木のある暮らしを体感いただけます。来訪されるお客様には家族連れも多いのですが、お子さんたちが無垢の床材に座って遊んでいる姿を目にします。大人は知識をもとに行動しますが、子どもは自分の感覚に素直です。子どもたちに木のぬくもりを感じてほしいという思いから「木とくらす幼稚園」というコンセプトで幼稚園や保育園、認定こども園に向けた内装材や収納商品を提案しています。展示会で商品をご覧になり、採用を決めたオーナーさんもいらっしゃいます。また、無垢の床材の感覚的な心地よさの指標を分析し、レーダーチャートを公開する取り組みをしています。

サステナビリティ施策の着実な実行

持続可能な社会の実現という世界的な課題に対しての取り組みを着実に実行しています。サステナビリティ委員会やサステナビリティ推進室を中心とした推進体制のもと、2023年度は人権方針とサステナビリティ調達方針、サステナビリティ調達ガイドラインを策定しました。ガイドラインに基づきお取引先にアンケートを実施していますが、これは当社とサプライヤーの皆様の認識のズレがないかお互いに注意しながら、目線を合わせていくことが大事だと考えているからです。今後もサプライチェーン全体で持続可能な共存共栄の関係構築を目指します。
社会貢献としては、2023年1月に準備室を立ち上げ、今年6月から障がいのある方のアート活動を応援する「one’s art 」プロジェクトがスタートしました。才能あるアーティストが製作に専念できるよう支援し、作品の販売、展覧会やイベントの開催を行っています。世界へ向けての発信を意識しWebサイトでは日本語と英語を併記しています。
環境では、生産過程で発生する木くずを有効活用したバイオマス発電による再生可能エネルギーを利用し、国内全ての製造拠点でCO2排出量ゼロの電力を使用しています。バイオマス発電は、木くずを燃焼させてエネルギーを生み出し、排出されたCO2を山林で再び吸収させるという自然環境重視の循環があります。太陽光発電のソーラーパネルを設置するため、各地で盛んに山林が切り崩されていますが、パネルのリサイクルまでを考えていかないと本来の意味のサステナブルとは言えないと思います。

ニュージーランドの競争力を取り戻す

グループ全体で考えるとニュージーランドの競争力を取り戻す課題がありました。
伐採と植林による30年1サイクルとした循環型の森林経営を基軸に、効率化による流通コストを含めた原材料コストの削減、無駄のない調達による収益向上を推進します。木材の歩留まりを上げていくことは永遠の課題であります。
また、さまざまな活動を通して、木材の魅力を伝え活用を広げていくことも当社の大事な使命です。市場のニーズに対応した他社にはない新商品がたくさんありますので、収益を上げていくとともに、商品を通じて当社の姿勢や存在意義を示していきます。
庄原市の後押しを受けて新設したフォレストワン庄原工場が2024年4月から稼働しました。庄原はヒノキの産地ですが、これまで加工する工場がなく、雇用も少ないことが課題でした。当社の事業にとっても高級感のあるヒノキは収益につながる材料ですので、今後はニュージーパイン®に加えヒノキのような国産材も取り入れて全体のバランスを取っていくことを考えています。ただ私たちは、庄原に山林を所有していませんので、市や伐採事業者の皆様と協力して地域の資源循環型林業を構築していきたいと考えています。
子会社の工場があるインドネシアは、2050年までの人口ボーナス期があり、毎年最低賃金も上がっていて、今後、大きなマーケットになります。インドネシアで製造している木質内装材は主に欧米に販売していますが、今後はインドネシア国内の販売比率を上げていくことを目指しています。

建材サービス業を目指して

製品にサービスを付加した建材サービス業も現在目指しているところです。例えば棚板は、通常は施工現場で木口を貼っていますが、工場で木口まで仕上げて出荷することで現場の作業が効率化できます。簡単に組み立てられる商品の需要はこれからも増えるでしょう。究極は素人の方が施工できるような商品です。建設業界の職人不足は今後も続きますので、省施工商品の拡充にも注力していきます。
当社の競争力のひとつとして、物流システムがあります。1992年という早い時期に業界に先駆けてオンライン受発注システムを構築し、タイムリーな対応でお客様からも高い評価をいただいています。今後もお取引先や物流事業者とともに効率的な物流やモーダルシフトの推進に取り組んでまいります。

長寿命化、防災・減災に貢献する構造材

40年以上前から開発を進めてきたLVL(単板積層材)構造材の「JWOOD」と専用金物を使った「JWOOD工法」は、長年にわたり木と向き合ってきた当社ならではの商品です。LVLは、木材を薄いべニア(単板)にして乾燥させ、接着剤で木目方向と平行に貼り合わせたものです。中まで乾燥しているので寸法安定性に優れ、均一な強度が確保できます。
JWOOD工法は、従来は鉄骨造で計画されていた中規模・大規模の建築に採用され、事務所や公共施設などの施工事例が増えています。一定量の直交層を配置した「B種LVLパネル柱」や6mを超える大スパンや大架構を可能とする「JWOOD150幅&140Eシリーズ」を含め、政府が推進する木造建築に対応する商品として需要拡大が期待されます。
JWOOD工法の住宅「ワンズキューボ」の特長は空間の自由度と耐震性能の高さです。茨城県つくば市にある国立研究開発法人土木研究所の三次元振動台装置を使用した実験では、震度7クラスの地震波で連続10回加振しても大きな損傷や変形はありませんでした。建築基準法では、1回の揺れで倒壊・崩落しなければよいという考え方ですが、熊本地震では震度7の地震が連続して起き、2回目の揺れで倒壊した住宅が多かったのです。耐震性能への需要が高まり、耐久性・耐震性に優れた構造材の使用が、建築の長寿命化、防災・減災につながります。

ステークホルダーへのメッセージ

日本の住宅着工数は今後も減少傾向にあると予測されますが、リフォーム事業や非住宅部門への材料供給など、木材活用の余地はまだまだあります。ニュージーランドの木材は世界的な競争力を持っていますので、それを活かしながらバリューチェーン全体でシナジーを創造し、日本のマーケットのみならず、海外での拡販にも力を入れていきます。また、企業価値の向上と財務体質の強化を図るために自己資本利益率(ROE)の向上にも取り組んでまいります。今後もステークホルダーの皆様のご指導ご支援を賜りますようお願い申し上げます。