トップメッセージ

植林から木材加工までの一貫生産体制で資源循環型社会に貢献

ウッドワンでは、長年にわたり、山林経営から木材加工までの一貫生産体制により、商品を開発・生産・販売する仕組みを構築してきました。木のぬくもりのある暮らしを提案し、人と自然が共生する資源循環型社会の実現に貢献することが私たちの提供する価値であり、存在意義です。

株式会社ウッドワン 代表取締役社長
中本祐昌

事業と一体化したサステナビリティ

当社グループは林業からはじまりました。木を植えてから収入を得るまで日本では50 ~ 60年かかります。その間の収入を稼ぐためにはじめたのが建材事業でした。今では木質総合建材メーカーに成長し、ニュージーランドのラジアータパインやオークなどの無垢材を使用した本物志向の内装材や収納商品の提供を通して、木のぬくもりのある暮らしを提案しています。木を植えて、育て伐採し、その材料で商品を作り、販売した収益で使った分だけ新たに木を植えて循環させていく。これをなりわいとして永続していくことが前提ですので、サステナビリティは、私たちにとって、ごく当たり前のことです。
1990年にニュージーランド北島で森林経営権を取得しましたが、日本で培ってきたノウハウがありましたので、海外にも躊躇なく進出できました。商品開発を進め、作った商品を売る自信もありました。チリ、インドネシア、南アフリカ、アメリカなど世界の森林を視察し、ニュージーランドの森林に競争力があることも確信がありました。
それから30年間、植林面積の拡大を図り、現在では約40,000haの森林を30区画に分けて植林―育林―伐採を繰り返す持続可能な森林経営を行っています。手入れにも力を入れ、8mまで枝打ちすることで、品質の高い無垢材を作ることができます。この優良原木がこれから大量に伐期を迎えます。
企業の存在意義は、事業活動を通して、社会や自然環境に貢献することです。当社グループでは、永年にわたり、山林経営から木材加工までの一貫生産体制を最大限に発揮して商品を開発・生産・販売する仕組みを構築してきました。このビジネスモデルのサイクルを回し、さらに大きくしていくことが、自然環境や社会に対する最大の貢献だと思っています。

社会環境の変化が追い風に

カーボンニュートラルや循環型社会の実現といった社会環境の変化や環境意識の高まりは、当社グループにとって追い風になっています。これまでは、木を植えていますといっても、それほど社会に響きませんでしたが、脱炭素が社会のテーマとなった今は非常に関心を持っていただいています。木は二酸化炭素を吸収し、加工しても炭素は木材に固定されたままですので、当社グループの商品を長く使っていただくことで、炭素の蓄積量を増やしていけます。さらにその収益で木を植える循環ができていきます。そのためにもお客様に木質建材の魅力や環境への貢献をお伝えしていくことが大切です。

一方で、地球規模の気候変動は、当社グループの事業にも影響を及ぼしています。2023年2月にニュージーランドの北島ギスボン地方で、サイクロンによる大規模な土砂崩れが起き、ニュージーランド子会社も被害を受けましたが、損害は保険でカバーできました。現地では14カ月にわたり大雨が降り続けたことで地盤が脆弱になっていたことも土砂災害の原因だといわれています。日本でも猛暑や、大型台風による豪雨災害が起きており、気候変動への対応は急務であり、改めて当社グループの事業の社会的な役割を認識するとともに温室効果ガス排出量の削減にも取り組んでいます。

カーボンニュートラルの取り組み

ニュージーランドにおいては、二酸化炭素を吸収する森林面積を減らすことなく、30年の周期で毎年一定の木材を永久的に収穫できる資源循環型の森林経営を実践しています。
国内では、バイオマス発電や再生可能エネルギーによる電力利用を推進することにより、カーボンニュートラルを目指しています。2015年にウッドワンバイオマス発電所を新設し、製造工程で出る端材などを燃料として発電し、FIT制度により全量売電してきました。2022年度からは関西電力の「再エネECOプラン(トラッキング付帯)」という仕組みを活用して、ウッドワンバイオマス発電所に由来するCO₂排出量ゼロの電気を国内製造拠点で使用しています。
また、バイオマス由来の接着剤の開発も進めています。2022年度より、環境省の「脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」の補助事業に選定されました。実用化には大きな投資が必要ですので、実証実験を進めて見極めていきます。

広島・庄原市と連携し、国内の森林を循環型に

日本全体の森林の課題として、木の伐採後、7割が再植林されないことがあります。森林を循環させて将来につなげていくことが重要ですが、今のままでは、国産材を使うほど、放置林が増えてしまうという悪循環になってしまいます。悲しいことは、本来であれば、適正な価格で取引されるべき国産材が、安い値段で買われボイラーで燃やされていることです。森林の所有者や職人に還元できるようにしないと事業として回っていきません。良質な木材がとれる樹齢100年ぐらいの木が増えている一方、住宅の長押などに使われる高級材の需要が減っています。ライフスタイルに合わせた住宅や建材を提案して、高級材の需要を広げていきたいと考えています。
日本では、放っておいても広葉樹の山になりますが、広葉樹は成長が遅く、大きく根を張るまでに長い時間がかかり、その間に土砂崩れが起きやすくなります。私が子どもの頃は、台風が来ると、どこかの山が崩れていました。これまでは杉や檜などの針葉樹を植えて管理をすることで森林を守ってきましたが、それを失っていく時代になっていくのです。私たちの仕事を通して少しでも日本の森林を持続可能なものにしていきたいと考えています。
広島県庄原市から熱心に誘致していただき、子会社の株式会社フォレストワンが庄原市内に製材・加工の工場を建設しています。2024年4月から操業を開始する予定です。庄原市は高品質な檜が多く、中には樹齢200年のものもあります。高級寿司店のカウンターに使われている檜の多くが吉野産です。吉野ではヘリコプターで集材していますが、それでも収益が上がる仕組みやブランド力があります。近い将来、庄原産の檜が、それに負けないぐらいのブランドになり、全国の皆さんに知っていただけることが願いです。市と協力して、山元への還元を少しでも向上していければと思います。当社グループにとって、大きな挑戦ですが、地域の循環型林業構築の一助となり、地域材の付加価値を高めていきたと考えています。将来的には、それらを当社グループの商品としても販売していく計画です。

サステナビリティを全社で推進

2023年3月にサステナビリティ委員会とサステナビリティ推進室を設置して全社的にサステナビリティを推進していく体制ができました。最終的な責任は委員長の私にありますが、できるだけ権限移譲をして、分科会や各部門で具体的な施策を進めてもらい、サステナビリティ委員会で報告を受けるシステムを構築していきます。

また2022年度は、環境、社会、ガバナンスにおけるマテリアリティを特定しました。この中で特に重要課題としたのが、クリーンな材料調達です。ニュージーランド以外からも木材を調達していますので、クリーンウッド法のいう合法木材の利用を促進し、森林資源の保全に努めています。さらにニュージーランド子会社の全森林・全工場、中国、フィリピン子会社工場、インドネシア子会社工場及び国内の木質建材工場において森林認証を取得しています。児童労働や強制労働が行われていないことも調達の重要な条件です。2023年度は、サプライチェーン全体でサステナブルな調達活動を行うために人権方針やサステナビリティ調達方針を制定しました。
人的資本経営については、方針や戦略に沿って人事制度や人材育成の体系を整備しました。人材は当社グループが成長を続けるための重要な資産です。マテリアリティにも「挑み、成長できる組織づくり」を掲げ、人材育成には非常に力を入れています。外部の研修組織を活用しながら、幹部教育を含めた研修を実施しています。社員に対しては、自分たちの仕事が環境や社会に貢献していることに自信と誇りを持って欲しいと思います。同時に労働生産性の向上にも取り組んでいます。営業部門の業務プロセス改革や改善、生産企画・設計工程や製造ラインにおけるデータの利活用や高度化など、現場のDXを進めています。

成長分野やサービスへの展開

ニュージーランドでのビジネスをはじめて30年以上になり、当社グループの強みを活かしながら事業の再構築をするなど、組織としてのディスタンスを見直す大切な時期にきています。森林自体は競争力がありますので、将来的には、さらに森林面積を広げていきたいと考えています。
貴重な資源である木を余すことなく使うことも大切なことです。先日、インド洋にあるモーリシャスやセーシェルを訪れた際、精油を抽出するために杉が植林されているのを見ました。杉のアロマオイルは人気が高いそうです。昔、日本では、松根油をジェット燃料にする試みがありましたが、実用化には至りませんでした。木材の保存や加工の際に出る油分など、まだまだ利用できるものがあります。簡単なことではありませんが、こうした未利用部分の活用を考え、商品化して流通させることにも力を入れていくべきです。
20世紀は、地下に眠る石油資源を墓泥棒のように暴き出し、地上にばらまいてきました。これからは、人と自然が共生し、森林を循環させ、地球環境が健全になるようカーボンを吸収していく時代です。それが私たちの大きな役割だと考えています。私たちの仕事が評価していただけるようになり、自信を持って進めていける時代になりました。そのため、成長戦略としては、新築住宅市場の深掘り、リフォーム、非住宅、商環境などの国内新市場の開拓を積極的に進めていきます。今後もこれまで行ってきたことを継続して、さらに建材パーツのお届けや施工といった建材サービス業に事業を広げていくことで、よりお客様や社会の役に立つ仕事ができると思います。それがこれからの私たちの仕事だと考えています。
当社グループの事業は、木を植えてから、商品にするまで数十年を要し、思い描いた未来を実現するための長期的な視点が不可欠です。それと同時に目の前の成果を出していくことも必要です。私は、この長期と短期のバランスを常に考えています。ステークホルダーの皆様にも長い目でご支援いただければ幸いです。