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新築夫婦劇場「家買うふたり」

「家庭内別居?」

妻が突然口にする。無理もない、ようやくできたふたりの休みの日に、僕は友人との飲み会の予定をいれてしまっていたのだ。

「これも仕事のうちなんだ」

「なんでも仕事っていえばいいと思って」

バタンと強めに自室のドアを閉める妻。何があったのか、彼女はここ2〜3日とてもイライラしている。

第一部:夫から

「家を建てよう」

そう話し合いをし始めてから、なんだかふたりの関係がおかしい。一生ものの買い物だ、そう簡単に僕の考えを譲るわけにはいかない。デザイン系の学校に通っていたせいもあって、コンクリート打ちっ放しの壁、大きなガラス窓、暖炉、デザイナーズ家具……僕はそんな暮らしに憧れ、自分なりのこだわりを持っていたのである。

1週間前から始めた家づくりの話も止まってしまっている。一緒に住み始めて10年、ふたりの好みがここまで合わないとは……。確かにふだんは共働きで忙しいふたり、いつからすれ違ってしまったのだろう?

ある日の会話はこうだ。

「せっかくならモダンな感じで、クールな総ステンレスのキッチンはどう?」

「料理もしないくせに。あなた、キッチンなんか興味ないでしょ?」

(……えらく噛み付くなあ。せっかく料理してくれる妻のためにと思って、言ってるのに)

「わたし、家を建てるなら無垢材の床がいいわ」

「そんな地味なところにお金かけるのはつまらないよ」

喧々諤々の話し合いが続く……ただかっこいいだけの家を望む僕(それだっていいじゃないか!)、そしてロハス、木、自然にこだわる妻。そもそも“無垢材の床”ってなんなんだ?

いつもとは違う妻の態度−−自室に籠城なんて知り合ってから初めてだ−−に憤りを覚えつつも、今さらだけど、彼女の“こだわり”が気になって、無垢材の床や木について調べてみた。

すると……単純に家の建材といっても、素材によっていろいろあるんだな。木の柄を印刷したシート貼りのものや無垢の木……。本物の無垢材なら、調湿作用があったり、心の安定によい自然のゆらぎ模様があったり、ほのかな香りによる癒し効果があったり。そして、何より木は生きているから、年を重ねるうちに 味わいが出る……こんなこと知らなかった。調べれば調べるほどステキじゃないか。そういえば建てたあとのことや住み心地なんて、これまで考えたことがなかったかもしれない。事前に家づくりについて、もっとよく調べておいたらよかったな……。

共働きにもかかわらず、毎日食事の支度をし、洗濯、掃除をこなしていた彼女。これから建てる家についても僕よりずっと真剣に考えていたに違いない。これからズーッと一緒にいるのだから、ふたりが納得できるいい家を建てなくては! そう決意した僕は彼女の部屋の閉ざされたドアを−−それは彼女の心の象徴でもあるのかもしれない−−ノックしようとする……すると、いつの間にか外出から戻ったらしく、僕の背後に立っていた彼女が一言。

「妊娠してた」

僕の顔を見て、涙ながらにそう言った。

第二部:妻から

ここのところ体調がすぐれない。もちろん彼のせいじゃないことは分かっているのだけれど、イライラすると仕事中でも料理中でも掃除中でも、人や物についつい当たってしまう。この前だって、お皿を何枚割っただろう……わたしの悪い癖だ。

「家を建てよう」

そう言ってくれたとき、結婚当初から「いつか自分たちの家を」と、がむしゃらに働いてきた彼の姿を思い出した。私たちはこのために働いてきたんだ。ここ最近はいつもすれ違っていたけれど、ようやくふたりの夢に手が届く。末永く一緒に過ごすための、最高に居心地のいい家……いるだけでみんなが落ち着いて笑顔になれる、そんな家が私の希望だ。

でも彼ときたら、話し合いを始めた途端にデザインや見た目のことばかり、体調の悪さもあっていつもよりキツくあたってしまった。少し反省。でもあまりにも体の調子が悪い、もしかして……。

病院から帰ると、わたしの部屋の前に彼が立っていた。バツの悪そうな背中を見るに、一緒に過ごせなかった休日を反省している様子。振り返った彼に、一筋の涙とともに一言。

「妊娠してた……」

それからの彼は家づくりに関して人が変わったように熱心に調べ物をしている。

「やっぱり君の言うように、無垢材の床にしよう。子どもは裸足で育てると五感が鍛えられて、感覚が豊かになるらしいからね。生まれてくる子どものためにも、裸足で歩ける家にしたいんだ」

フフ、もうパパになったみたい。でも彼なりに木について調べるうちにもっと大切なことにも気づいた様子。

「そしてなによりも、家に使う建材は、地球に優しい木を選びたいと思うんだ」

「なんで?」

「地球の資源はこのままいくと危機的状況にあるっていうじゃないか。生まれてくる僕たちの子どもが大きくなるころ、地球がどうなっちゃうのかなって思って……。それでロハスっていうのかな、自分の家で使う建材ぐらいは、ちゃんと環境のことを考えた会社のものを選んだほうがいいんじゃないのかな、そう考えたんだ」

「ふ〜ん」……夢中で話す彼をみて、本当に、彼なりにいろいろ考えてくれたんだなって、感心した。

私はモダンなステンレスのキッチンとか趣味じゃないし、木のキッチンは見た目が好みの素材が見つからなかったんだけど……。今は夫がおすすめの、職人さんが何工程もかけて仕上げてくれたキッチンに惹かれている。

自分たちで計画的に育てた森で大きく成長したニュージーパインを使っているから、木をむやみに伐採しつくすこともないそう。そんなロハスな森の話も、産まれた子どもが大きくなったら、教えてあげたいポイント。

最近はつわりで立ち仕事がつらい私のために、夫も厨房に立ってくれたり……今後はふたりで、いや3人で料理したりしてもいいかもしれないな。

そんなこんなで、家づくりの話をまた始めたのだけれど、ドアも、床と合わせて無垢材にしたいっておねだりしてみた。もちろんけんかしないのが一番だけど、今回みたいに籠城して距離をとってみたら、ダンナもちょっと改心したみたいだし(笑)。

後でけんかの時の話をふたりでしていたら、彼は外から私の部屋のドアをずっと見てた、っていうんだけど、実は私も同じ。夫がドア開けて入ってこないかなあ、って、ずっとドアをみていたの。だからドアは、ふたりを隔てるものではなくて、ふたりをつなぐものなのかも。見るたびにあたたかい気持ちになれるような、いいドアが見つかるといいな。

建材に触れてみるために、ショールームへ行ってみよう。 お互いが抱えていた想いを理解しあって、家づくりをふたたびスタートさせた新築夫婦。夫が気になるという、無垢の木の建材に定評があるメーカーのショールームへ、ふたりで実際に行ってみました。
  • システムキッチン System kitchen

    妻の意見

    木に触れると、しっとりスベスベの手触り。同じ木材でも自然の木はすべて個性があるから、機械じゃなくて、人の手でひとつひとつ磨いてあげなきゃいけないんだって。職人さんのストーリーを感じます。「su:iji(スイージー)」に使われているニュージーランドの森からやってきたニュージーパインは、キッチンに居ながら自然がすぐそばにあるような錯覚をうけるぐらい、爽やかな印象。このキッチンで料理している私たち……うん、とってもイメージしやすいな。私にとって使い勝手がいいか、だけじゃなく、夫にとっても使いやすいキッチンであれば、たのしく家事分担できると思う!

    • システムキッチン
    • システムキッチン
    • システムキッチン
  • フローリング・床材 Flooring・Floor material

    夫の意見

    一口にフローリングといっても、素材によってさまざま。よく見極めるべし、と住宅雑誌にあったので、どうしても実際にみて、触っておきたかった。この無垢の床「ピノアース」は、シート貼りの床などにはない、自然なゆらぎ模様があるとかで、見ていると吸い込まれそうに癒されそうな、そんな感覚。無垢の一枚物で、木の表面が、うづくり加工というらしく、ちょっと凹凸があって、すごく手触りがいい。手触りだけじゃなく、はだしで歩いてみると、足触りもいい。ついでに寝転がって、まだ見ぬ我が家で家族団らんの練習!?なんてしてみたかったけど、お行儀が悪いと妻に止められた。

    • フローリング・床材
    • フローリング・床材
    • フローリング・床材
  • 建具(室内ドア) Door

    建具(室内ドア)

    Door

    妻の意見

    いままで「どんなドアにする?」なんて考え事、人生のなかでしたことがなかったけど、ドアってこんなにいろいろあったのね! 木はもちろん質のいいものなんだけど、それをどんな色にするかとか、ドアノブのデザインをどうするかとか……迷い出したらキリがない! 私はピンクが好きだけど、でも彼、かっこいい家具とか買いたがるだろうし、何にでもあわせられる色がいいかな。アレコレ妄想しつつも、実際には、ドアはやっぱり開閉してナンボ。開け閉めしてみた手の感覚、直感でバシッと決めちゃいました(笑)

    • 建具(室内ドア)
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