
2025 優秀賞
2025年度
群馬県
『花と根』
関東平野の北、山から平地へと水が運んだ土が、なだらかな南向き斜面として堆積している。この日当たりのよい農地の一角で、地面と関わる暮らしを望む家族の住宅である。四季豊かな田畑ではあるが、人が暮らすには水と土の循環が激しい。だから、流れの中で身を寄せられる物陰をつくろうと考えた。まず、季節風に対しL 型に壁を立てる。風が割れ、入隅に淀みができる。土や植物の種が運ばれ、堆積していく。やがて緑が根付き、溜まった土を地形として定着させる。草木が伸び、緑陰に生き物たちがやってきて、小さな生態系ができる。もし、この屏風のような壁に住めたら、人も生態系の一部となれるかもしれない。一方で、生態系の編み目が密になればなるほど、そこから自由になる居場所も必要だと思った。物見塔は、いったん建築の外に出て屋根の上を歩かないと辿り着けない。根を張るように場所への理解を深め、その経験を元に、花が開くように想像を広げる。