建材全体が同じように「経年美化」していかなければならない、と考えています。日本人は「経年変化を楽しむ」という感覚を頭では理解していても、どこかで常に新しくてクリーンで、変化しないことに価値を感じてしまう部分がある。実際、近年使われる多くの素材は生活のなかで美しい経年変化を生みませんでした。汚れてしまうだけで、良くはならない。でも本物の素材は、たとえ欠けたとしても味になってくる。劣化ではありません。
豊かな暮らしと言われたとき、「マイクロコンシダレーション」や「マイクロケア」という言葉が頭に浮かびます。生活とは、ケアして美化していくものだと思う。もちろん無頓着にただ生きる場合もあるでしょう。でも日々の生き方が整っていないと、いわゆる経年美化する生活はできないんです。ケアというのは掃除だけではなくて、たとえばテーブルに茶碗を置くと輪染みがつくから、コースターを使うか、クロスを敷くか、自分で選択することです。コースター一つとっても、厚手にするかラタンにするか、麻のような薄いものにするかで全然違う。いずれにせよ、ケアすることが最終的に重要です。
もう一つ単純なことを言うと、「四隅にものを置かない」ことが、シンプルに生きる基本的な秘訣です。人間って習慣的に、コーナーから置いていきたいでしょう。カバンがあれば空いている角に置く。角は強い場所なんです。でも部屋の中で三つの平面が合わさる部分が見えると、空間全体がシンプルになります。家具をコーナーに合わせて置くのは、本来最悪です。ベッドも壁につけず、真ん中に置く。そうするとすごくきれいに寝られます。ワンルームでもベッドを中心にどんと置けば、ビジネスホテルのようにはなりません。それか布団で寝る。布団はいいですよ。真っ白な部屋に白いリネンを合わせれば、どんなベッドよりも清潔で美しいと思う。それも真ん中に敷いてください。僕はもちろん、部屋の四隅には何も置いていません。
床もそうです。部屋の中にラグがあると「だらしなくしていい場所」ができてしまう。その上ではどんな暮らしをしてもよくなる。確かに何も敷かなければ床に傷はつきます。でもこんなに良い床材なら、ラグやカーペットは敷きたくないでしょう。この床を見せたいと思うはずです。そこに相性のよい家具を考える楽しみもある。ここには「何もないけれど全部ある」みたいな贅沢さがあります。そういう姿を、どこかのメーカーが堂々と見せていかないといけない。ミニマルでリッチというのがどういうことなのかを、自覚していけると思います。
Text|Mai Tsunoo
Photo|Masaki Ogawa