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アナザーストーリー

カテゴリ : 木にまつわるエトセトラ

第43回 ありがたーい、木のはなし。
仏教では、「無憂樹」「菩提樹」「沙羅双樹」を神聖な木として三大聖木と称しています。

「無憂樹」(むゆうじゅ)の別名はアショーカ。マメ科に属します。お釈迦様の母マーヤが出産をされたのが、ルンビニ園で花を付けていたこの木の根方でした。苦痛もなくすんなりと出産できたから、なんら憂いが無い安産の木としても知られています。

菩提樹(ぼたいじゅ)は、たまに寺院の庭に植えられているのを見かけます。インド・中国・ヨーロッパそれぞれでは科目が違い、ちなみにインドでは桑科でイチジクの仲間です。お釈迦様が修行をされるとき、菩提樹の木陰で深い瞑想を続け、人間の煩悩から解放されて悟りを得られた場所です。またこの木の実はムクロジといい、これを乾燥させ数珠玉として利用することもできるのです。

沙羅(さら)の木は、庭木として植えられるナツツバキのこと。夏になると真っ白い可憐な花を咲かせます。お釈迦様が八十歳で入滅(亡くなること)された地の、東西南北それぞれに2本づつの沙羅が咲き誇っていたことから、通称を沙羅双樹と言っています。

また、平家の隆盛と没落を琵琶法師によって語られる「平家物語」では、その冒頭にだれでも永遠はあり得ないという例えを、沙羅双樹で表現しています。

「祇園精舎の鐘の声/諸行無常の響きあり/沙羅双樹の花のいろ/盛者必衰(じょうしゃひっすい)の理(ことわり)をあらわす/唯(ただ)春の夜の夢のごとし/たけき者も遂には滅びぬ/偏(ひとえ)に風の前の塵におなじ」

(意訳)祇園精舎の鐘の響きには、先が読めないこの世の無常を表しています。沙羅双樹の花が勢いよく咲いているようでも、時がくれば必ず萎むように、いくら健康で社会的に勢いのある人でもいつかは衰えが来るのです。誰でも永遠などありません。そう考えると人生は、まるで春の風で吹き飛ばされてしまう小さなホコリのようではありませんか。

とくに日本の風土に合う沙羅の木はよく見かけることができます。白い花が咲く夏になると目にとまりますので、三大聖木の一つだなとご覧いただくと楽しみも深まりますね。