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アナザーストーリー

カテゴリ : 木にまつわるエトセトラ

第41回 家のつくりようは夏をむねとすべし---吉田兼好
皆さんは、夏と冬ではどちらの季節がお好きでしょうか。言い換えると、どちらの季節が過ごしやすいと感じていらっしゃいますか。

かの「つれづれなるままに・・・」から始まる“徒然草”を書いたことで有名な吉田兼好は、その第五十五段に「家の作りやう(よう)は夏をむね(旨)とすべし 冬はいかなる所にも住まる 暑き比(ころ)わろき(悪い)すまひ(住まい)は たへ(耐え)難き事なり」と著しています。意訳すると「家を造るときは、なによりも夏が快適に過ごせることを基準に考えなさい。冬が寒くても、火を熾(おこ)したり重ね着をすればなんとかなるものだが、夏の季節を考えないで造った家は、暑さを快適に過ごす対処のしようがなくて耐え難いことになるから。」というところでしょう。彼の出自が、夏は酷暑、冬は極寒になる京都だけに、厳しい気候と暮らしやすさの関係について敏感だったのかも知れませんね。

もっとも現代は、気密性の高い家造りと冷暖房設備のおかげで、屋内にいる限り年中快適に過ごせる住環境になっています。だけど思い返してみてください、このような住環境が整った家造りに目が向けられるようになったのはつい最近のことです。

ちょっと郊外に足を延ばして田舎に行くと、日本特有の建て方をされた家屋が残っています。それらを見ると例えば、雨戸や障子、襖を開けはなすと容易に屋外と繋がる建て方になっていて、極端に言えば表から裏庭まで目線も風もストレートに通ってしまいます。気密性や保温性はあまり重要視されることがなく、むしろ積極的に外気を吸排気しようとしていることが推察されます。これは囲炉裏や炊飯の煙を外へ出さないといけないこともあったでしょうが、別の解釈をすれば暑い季節でも涼しい風を容易に取入れることができるので、いかに夏を快適に過ごせるかを考えた先人の知恵とも言えるでしょう。

私たちの住環境は、文明とテクノロジーのおかげで季節感すらなくなりつつあります。しかし日本には、こういう四季を踏まえた、別の意味で快適な家造りの考え方があったことを再認識しておいても良いのではないでしょうか。