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アナザーストーリー

カテゴリ : 木で出来たプロダクト

第38回 木が布になるとき。
ベニヤ板の材料として使われる木材の中に「シナの木」があります。この木は北海道から九州にかけて広く生育する落葉高木(※)です。木質が比較的柔らかいことと木目もあいまいなため、小学校や中学校で版画の時間に彫った版木はたいていシナの木でした。

山形県では今でも、このシナの木の内皮を使った織物(シナ布)が作られています。もともとは長い冬のため、外の作業ができない季節の内職として、主に北海道から東北地方にかけて広く営まれていたようです。木から織物と考えると意外な気がしますが、アイヌの伝統衣服もシナの木の繊維を使って織られていますからイメージしやすいでしょう。

もっとも、シナ布を作るためには大変な手間と、たくさんの工程がかかります。まず新緑が美しく映えるころ山に入り、シナの木の若木からツクシという専用のノミで皮を剥ぎ取る作業から始まります。剥いだ皮は一昼夜水に浸け、さらにアク抜きのために木灰を入れた大釜で半日以上煮こみます。これを手で揉みながら薄い層にし、米ぬかにつけ込んだ後に乾燥させておきます。そして秋になると清流で洗い、裂きながら少しずつ細い糸にするのです。そして冬、この糸に撚(よ)りをかけてやっと機織りにかけることができます。ここまでおおまかに工程手順を書きましたが、実際はもっと細かく数十工程があるのだそう。しんしんと雪が降り積もる静かな夜、炉端で糸つむぎ仕事をするお婆さんの昔語りを聞きながら、冬のひとときを過ごしていたであろう情景がしのばれますね。

かつてこうして織られた布は、衣類の他、農作物を保存する袋や味噌づくりのこし布などに使われていました。現代は伝統工芸品の位置づけで、着物や帯はもちろん、ポーチ、帽子、のれん、札入れ、名刺入れなど、多様な製品になって目にすることができます。

(※)落葉高木/一年ごとに落葉と新葉を繰り返す、樹高が5mを超える樹木の総称。